憂鬱でなければ、仕事じゃない【書評要約】見城徹/藤田晋

憂鬱でなければ、仕事じゃない【書評要約】見城徹/藤田晋

今回書評をする本は、ビジネスマンにとってのバイブルと言っても良いだろう。

出版社の幻冬舎社長の見城徹と、サイバーエージェント社長の藤田晋の共著「憂鬱でなければ、仕事じゃない」。

初版は2011年と少し前の本だが、僕はことあるごとに読み返している。
そしてその都度、内容をより理解して自分の中でスッと腑に落ちる。

多分、自分自身がビジネスマンとして、経営者として少しずつ経験を積んでいくことで、書かれている内容を納得できる境地になっているのだと思う。

本の内容は、仕事上の様々な場面での、大切にするべき重要な考え方を見城氏が紹介する。
それについて見城氏のこれまでの仕事の実例を紹介しながら解説していく。

それは仕事上で困難にぶつかった時に、小手先だけのテクニックではなく、考え方や人間力そのものを鍛えさせて乗り越えるようなアドバイスだ。

またその内容について少し違った角度から、藤田氏が解説する。
藤田氏は割と若者寄りの視点から、見城氏の解説を補足していくイメージだ。

見城氏の考え方や行動は、一見普通じゃないように読めるかも知れない。
だがそこにこそ、成功するためのヒントが隠れている。
見城氏の言葉を借りると「極端こそ我が命」。つまりは突き抜けていないと選ばれずに埋もれてしまうということだ。この話も本書に出てくる。

だがよく解説を読めば納得の内容であるし、一流の人の考え方はこうなっているのかと、とても参考になる。

またそれぞれの内容を一言フレーズで紹介するのだが、どれもキャッチーで覚えやすい。さすがは敏腕編集長だ。
大切なエッセンスは、自分がその場面に遭遇した時に発揮されないと読書の意味がない。
このキャッチーなフレーズのおかげで、重要な考え方を覚えておくことができるのも、この本の素晴らしいところだ。

特に響いた内容を記載したいと思う。

見城徹・藤田晋

知っている人がほとんどだと思うが、2人の経歴を少しまとめておく。

見城徹

幻冬舎という出版社を立ち上げ、現在も代表取締役社長の見城徹。
幻冬舎といえば、最近メディアに出ている箕輪厚介も幻冬舎に所属している。
さすがは見城氏に鍛えられているだけあって、独特で突き抜けたキャラクターを発揮してメディア露出も多い。

見城氏は元々、角川書店で多くのベストセラーを手掛けた編集者だった。

角川書店時代には、つかこうへいや山田詠美など5名の直木賞作品を担当。
また村上龍、坂本龍一、松任谷由美や尾崎豊と言った有名人との交流も深かった。

幻冬舎を設立後も、石原慎太郎や郷ひろみなどの作品を出版し、大ヒットを記録する。この辺の裏話や苦労話は本書にも登場するので注目して欲しい。

藤田晋

株式会社サイバーエージェントの創業者であり、取締役社長の藤田晋。

盛衰の激しいベンチャー企業にあって、1998年の創業以来20年以上、IT企業のトップを走り続けることは、非常にむすがしいことのはずだ。

それはひとえに、藤田社長の時代を捉える感覚と事業形態を適切に変化させていく力が秀でていることが大きい。

それに加えて、見城徹のように人間力を非常に見抜く社長にも気にかけてもらえるだけの人間力があるのだろう。

当時は創業したてでベンチャー企業だった人材派遣会社のインテリジェンス(現在のパーソルキャリア)でキャリアをスタートさせる。そしてサイバーエージェントを創業するのだが、創業してからのダイナミックで生々しい苦労話は、著書の「渋谷で働く社長の告白」で読むことができる。
こちらもとてもオススメの本だ。

自己顕示と自己嫌悪は「双子の兄弟」

いろいろな世界で頭角を表してくる人を見ていると、誰も自己顕示欲が強い。
しかし、それだけではいけない。一方で、同じ分量の自己嫌悪が必要だ。
魅力ある人間においては、必ず、自己顕示と自己嫌悪が、双子のようにつながっている。その二つを揺れ動くからこそ、それが他人から見ると、魅力に映る。
それがその人のオーラなのだ。

見城徹

自己顕示欲だけの人間など、単なるいやな奴にすぎない。
僕は人がふと、自己嫌悪をのぞかせた時、「この人とは付き合えるな」と、思う。

見城徹

一般的に起業家というのは、自己顕示欲の塊のように思われています。しかし実際に会社を始めると、組織を引っ張ってゆくには、自己顕示欲は時として邪魔になることに気づかされます。
うまくいっている時は、自分ではなく、社員みんなが頑張ったのだと言い、悪い時は自分の責任だと言う。本当に優秀な経営者はそういう人が多いです。

藤田晋

社員の力を最大限に引き出すことのできる人が、いい経営者です。しかし、自己顕示欲は仕事の原動力であり、実務上も自己アピールが必要な場面が数多くあります。その難しい二つのバランスをとるには、どうすればいいか?
それは経営者が常に正直でオープンな姿勢を心がけていることではないでしょうか。

藤田晋

30代や経営者になって一番難しいなと感じているのは、「バランス感覚」だ。

理想だけでもいけないし、現実のみでもいけない。何事もバランスをとって前進して行かなくてはと思っている。

この自己顕示欲と自己嫌悪も「バランス」。そしてその揺らぎが人とのしての魅力になるということを教えてくれたポイントだった。
迷いながらでもバランスを取って進んで行かなくてはな、と感じた。

「極端」こそわが命

世の中には選ばれるものと、選ばれないものがある。そして人は誰でも、選ばれるものになりたがる。
しかし奇妙なことに、多くの人はそのための戦略を欠いている。
「極端」は、選ばれる戦略の最大キーワードだ。

見城徹

「極端」であれば、振り切れている。突き抜けたオリジナリティーを獲得している。だから、明快であり、新しい。
ではどうすれば、「極端」なモノを生み出せるか?「中間」を憎み、極北を目指して圧倒的努力をするしかない。
圧倒的努力とは、とても単純である。人が寝ている時に寝ないってこと。
そして、どこから手を付けていいかわからない膨大なものに、手を付け、最後までやり通すことだ。

見城徹

ネット業界で仕事をしていると、人は際立ったもの、極端なものを好むことを痛感します。
僕たちは、極端なものを生み出すため、日々格闘しているとも言えます。

藤田晋

今、この分野はどのような状況にあるか、そこで際立つためには何をすればいいか。ビジネスではそんな相対的な視点から、魅力ある商品やサービスが生まれるのです。

藤田晋

よく、ビジネスやマーケティングの分野では、「差別化」という言葉が使われる。

商品が売れるためには他社商品と何が違うか、それが明確になっていないといけない、というのがマーケティングの基本中の基本だ。

「極端」であることは最大の差別化だが、見城氏の言う通り、極端なものになるためには、簡単なことではない。

無駄を削ぎ落とし、突き抜けるためには、相当の葛藤が生まれるはずだ。
尖ったものには、周囲からの雑音も投げ掛けられがちだ。

極端であり続けるためには、見城氏の「圧倒的努力」が必要だろう。とても参考になる。

憂鬱でなければ、仕事じゃない

ふつうの人は、憂鬱なこと、つまり辛いことや苦しいことを避ける。だからこそ、あえてそちらへ向かえば、結果はついてくるのだ。
楽な仕事など、大した結果は得られない。憂鬱こそが、黄金を生む。

見城徹

悩むことは、もとより憂鬱である。そして、おのずと限界がある。それを越えるためには、「暗闇の中でジャンプ」するしかない。
未知のステージや世界に飛び込むからこそ、全身がある。
人生とは暗闇の中のジャンプの連続なのだ。

見城徹

僕自身の人生を振り返っても、自分が成長したと感じられた時は、大抵たくさんの憂鬱が付きまとっていました。
初めての仕事に挑戦する時にはいつも憂鬱を感じますが、それを乗り越える度に新しい「経験」を手に入れることができます。
それがキャリアになって、人は成長していくのです。

藤田晋

これは、正に自分への戒めも込めて、ここに記録しておきたい。

やはり人間、楽な方へ向かってしまいがちだが、そうした先に大きな成果や成長がないことはもうわかっているはずだ。

仕事上で、面倒だな、憂鬱だなと感じる仕事は、逆にチャンスだと捉える気概が必要だろう。
「憂鬱でなければ、仕事じゃない」
覚えやすいフレーズなので、憂鬱に感じた仕事に直面した時に思い出して、乗り越えて行きたいと思う。

顰蹙(ひんしゅく)は金を出してでも買え

斬新で図抜けたことは、必ず人の神経を逆なでする。
しかし不思議なことに時がたつと、非難はいつか称賛に変わっている。

見城徹

僕が社長を務める幻冬舎は、はじめは、誰も見向きもしてくれない弱小会社だった。大会社と同じ土俵で戦っても、絶対に勝てないと思った。
既成のものに勝つためには、土俵の外に出て、外から倒さなければならない。外で立ち上がったものが勢力を持った時、そこに新たな土俵ができる。そうなって初めて勝利への道が開けてくる。

見城徹

常識というのは、その業界のリーディングカンパニーが作ったものだ。それを崩す一番シンプルな方法は、外から風穴を開けることである。崩される側は、守勢になり、やがて悲鳴を上げ始める。
つまり、顰蹙とは、くずおれる者の、悲鳴にほかならない。

見城徹

僕は、サイバーエージェントを当時最年少記録の二十六歳で上場させました。上場する時は、周囲から大反対を受けたものです。また、実際に上場すると世間から強い逆風が吹きました。しかし、慣例に従っていたり、常識にとらわれていたりしたら、新しいことは起こせないと、今でも思っています。

藤田晋

顰蹙を買うのを恐れて、少しずつ変化させていたら、他社に出遅れていたでしょう。変革を恐れないものだけが、先に行ける。とどまったままでは未来は無いと思います。

藤田晋

このポイントも、見城徹の仕事に対する基本姿勢が伺える。それは困難な方へ、困難な方へと向かっていく姿勢だ。

誰も顰蹙を好んで買いたい人はいないだろう。できることならば、誰からも好まれる人でいたいと思うのが普通だ。

しかし、こと仕事に関しては、顰蹙を買ってしまうほどの大胆さ、常識外れさこそが、勝つための方法だということを教えてくれるとても良いポイントだったと思う。

いかがだっただろうか。今回紹介した内容は、本書のほんの一部にすぎない。

まだまだ珠玉の内容が詰まっているし、どのポイントもとてもわかりやすく、仕事に対する姿勢を正してくれる、良書だと思う。ぜひ一読してみて欲しい。