【Kickstarter日本上陸】日本の法人も世界に向けてクラウドファンディングが可能に

アメリカのクラウドファンディング大手Kickstarterが2017年9月13日から日本でもサービスを開始した。これまで日本からは、プロジェクトに投資し製品を購入することのみ可能だった。
しかし日本の法人がプロジェクトを開始するには、Kickstarterがサービスを展開している国(欧米各国、アジアではシンガポールや香港)の住所登録と銀行口座が必要だった為、日本発のプロジェクトはあまり多くなかった。
今回の日本でのサービス開始で、日本に住所があり銀行口座を持つ人ならだれでもプロジェクトを開始することができるようになる。これをきっかけに、多くの日本発のプロジェクトが立ち上げられるようになるだろう。
クラウドファンディングとは

日本でもだいぶ浸透しているクラウドファンディング。クラウドファンディングとは、ネット上で不特定の人から、自分の立ち上げたプロジェクトに投資をしてもらい、資金を集めることである。
アメリカのKickstarterやIndiegogoはその場を提供する、2大プラットフォーム(サイト)である。これらのサイトには、様々なプロジェクトが存在しており、毎日新規のプロジェクトが世界中から立ち上げられている。
立ち上げられるプロジェクトは、基本的に新規性の高いものが多い。現在市場に無いような製品やサービスが多く、だからこそ支援を募って資金を集め、製品を世に送り出そうと言うのが本来のクラウドファンディングの趣旨である。
日本ではサイバーエージェントが運営するマクアケが有名だ。こちらでも今まで市場に無かった新規性の高い製品の開発や、社会性の高い事業がプロジェクトとして立ち上げられている。中には、数千万円の資金を集めることに成功したプロジェクトも存在する。
なぜクラウドファンディングがウケているのか
製品の魅力
なぜ多くの人がクラウドファンディングを利用するのか。まず、プロジェクトが目標金額を達成した際に、投資してくれた人に対価として渡される製品に魅力がある。今まで市場に無かったが、こんな製品があればいいのに、といったニーズを満たす製品や、最新の技術を使った今まで見たことの無いような製品など、新規性の高い製品が多い。
割引価格で買えるお値打ち感
またほとんどの製品が、販売開始された際の小売価格より、割引価格で購入することができる。製品やサービスの作り手がプロジェクトを立ち上げることが多いため、クラウドファンディング上では、流通がマークアップする分を差し引いた卸価格で製品を販売するメーカーが多いのだ。お値打ち感を出してより多くの人に出資してほしいという考えだろう。
つまりクラウドファンディングで立ち上げられているプロジェクトの製品は、新しくかつお値打ちな製品が多いため、多くの人が購入するのだ。
クラウドファンディングで製品を購入するリスク
既にクラウドファンディングを利用した事がある人は分かるかもしれないが、クラウドファンディングで出資をして、製品を購入するのにはいくつかリスクが存在する。

プロジェクトの失敗
まずは、プロジェクト自体が目標金額の出資を集めることができずに、失敗に終わるケースだ。自分が気に入って出資をしていたプロジェクトが失敗すると、基本的には製品の製造やサービスが開始されず、白紙になるのだ。
その際はお金は返金されるが、自分が気に入って応援していた製品は、もしかしたら世に出ることがないかもしれない。
なかなか製品が届かない
プロジェクトによっては、出資を得たら製品を製造するための設備等に投資したり、材料購入に資金を充てるというものもあり、実際に製品が製造され手元に届くまでに数カ月以上かかるというケースもざらである。
特に海外のプロジェクトに出資して、製品が海外から発送されるケースでは、輸送にも時間がかかるうえ、自分のオーダーが製造・発送のどの段階なのかも把握しづらい。商品が届くまでやきもきしながら待つなんてことも起こり得るので注意が必要だ。
購入後のサポートが無い
市場で販売されている製品のメーカーなどと違って、クラウドファンディングでのプロジェクトは、一般人やプロジェクトのために組まれたチームがプロジェクトを立ち上げていることもある。
そのため、プロジェクトが終了して数年後にそのメーカーやチームが存続しているかどうかは疑問だ。仮に電化製品などを購入して数年で壊れてしまった場合や修理を依頼したい場合などに、サポートが受けられない可能性もある。
もちろん、一般企業もプロジェクトを立ち上げているので、その場合は数年後も企業の事業として製品の製造を継続しているだろうし、問い合わせも可能だろう。
しかし、常に販売している通常のECサイトと違い、基本的には期間限定のプロジェクトとして出資を募っているので、プロジェクト終了後の長いスパンでのサポートという点にはリスクが存在している。
クラウドファンディングは中小企業やベンチャーにとってチャンス

しっかりニーズを掴むことができれば、多くの人から購入してもらえるチャンスのあるクラウドファンディング。プロジェクトのサイトの構築も非常に簡単で、トライする壁が非常に低いのが魅力的だ。
既に製品を開発しており、マーケティングするばかりの企業にとっては、ローリスクで大多数にリーチすることができるかもしれない非常に良いチャンスだ。宣伝広告になかなかお金をかけられない、中小企業やベンチャー企業はぜひ取り組んでみるべきだろう。
実際には設定した目標金額の出資を得てプロジェクトが成功した際は、コミッションが運営団体に支払われるが、それは製品の販売価格に入れ込んでおくだけで、その他に費用が発生することもない。
まだまだ知名度の低いブランドや、マーケットがあるかどうか分からない製品のテスト販売として活用できるため、多くの企業が参加しだしている。
もともとは、「製品を世に送り出したいが、製造するための資金が不足しているから出資を募る」という色が強かったが、今やほとんど完成している、もしくは完成の目途が立っている新製品の販売の場となっているのが実情だ。
出資する側も、製品の良しあしのみで出資するかを判断しており、割り切った購買心理となっている。しかし裏を返せば、製品さえ受け入れられれば、大きなチャンスが広がっているのだ。特に世界中に支援候補者のいるKickstarterの日本上陸は、世界に製品を告知し販売できる非常に大きな機会だ。
日本企業がKickstarterで成功する為の壁
世界の多くの人に製品を告知できる大きなチャンスということは、競争も激しいということだ。いたって普通の製品のプロジェクトを立ち上げても、注目を浴びることができず埋もれてしまう。他のメーカーや市場にある製品とは違う、新規性のあり差別化された製品である必要がある。
Kickstarterを覗いてもらえるとわかるが、そのために各プロジェクトは事細かに製品やサービスの説明をしている。下の方までスクロールしないと読み切れないほど、びっしり製品をアピールしている。
こうした競争下で日本の企業が成功するためには、まず英語能力が重要だ。細かな仕様まで明確に説明できる専門性や、長文を書き上げることができる文章力が求められる。また相手を納得させ、購入する気にさせる文章が書けなくてはならない。
また人気のでるプロジェクトほど、本文中に出てくる写真や、トップの製品紹介動画のクオリティが非常に高い。日本でそうしたビジュアル素材を準備する際に、欧米での生活スタイルに自社の製品がスッとマッチしているような写真や動画が必要になってくる。そうした見せ方ができるかもポイントだろう。この辺の準備も多くの企業にとっては難易度の高い壁となってくる。
だがしかし、クラウドファンディングのみならず、海外で製品を展開していこうとしている企業にとって、これらの壁は通常のビジネスにおいても必要なスキルであるはずだ。ぜひ海外展開に力をいれている企業は、Kickstarterを大いに活用し、世界を相手に成功を収めて欲しいと思う。
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