【スウェーデン出張記】人口が日本の10分の1でも強い経済 スウェーデン

スウェーデンには日本の約10分の1の人口しかいない。しかしその経済には様々な分野で国際的企業を持ち、日本でも良く知られているブランドが世界的に活躍している。どうしてなのか。
今回スウェーデンに出張に出て、お客とのやり取りを通して何かヒントを垣間見た。首都ストックホルムでの見どころ、楽しみ方も併せて紹介したい。
ストックホルムの楽しみ方
美しい旧市街ガムラスタンの古い街並は「魔女と宅急便」の世界

スウェーデンの首都ストックホルムにある旧市街地区、ガムラスタン。石畳の道路やレンガでできた建物は中世の雰囲気が残っており、ぜひ足を延ばしたい観光スポットだ。
スタジオジブリの「魔女と宅急便」の舞台ともなっているこの地区は、街中を歩いてみるとまるで映画の中にいるようだ。ストックホルム中央駅から徒歩15分ほどで到着することができる。またもし交通手段があれば高台からこの旧市街を見てみて欲しい。湾の向こう側に美しい街並みを一望することができる。
ド迫力な戦艦・ヴァーサ号博物館
スウェーデンは17世紀、バルト海の覇権を巡って周辺国家と戦争を続けていた。その時代に沈んだ木造戦艦・ヴァーサ号が博物館に展示してある。
1961年に海底より引き上げられるまで300年以上海底に沈んでいた戦艦は、腐食が進んだ船だったが長らくの修繕工事を経てほとんどが復元されたとのこと。全長約70mもあるその戦艦が博物館のど真ん中に堂々と展示してある。
博物館の中に入るとすぐ、その巨大な船に圧倒される。また船まで数メートルの距離で見ることができるので、当時の細かい装飾などもしっかり鑑賞することができる。

以前に書評したデービットアトキンソン氏の「新・観光立国論」でも学んだが、ヨーロッパの国は観光資源にしっかり予算を割いて修復・整備をしている。価値ある観光資源をその価値を目いっぱい展示している点はさすがだと感じた。
博物館には平日の昼間に行ったが訪問客が沢山いた。やはり「新・観光立国論」の通り、日本もこれくらい整備をして観光資源を生かさないと観光客も増えないのかもしれない。
食してみたい名物フード
仕事のお客の誘いで連日ディナーをともにしたが、おススメのスウェーデン料理店へ行った。自然の食材を素朴に調理したメニューが多くどれも美味しかった。スウェーデン人はミートボールにはこだわりがあるようで、中でもクリームソースと一緒に調理された一品はとても美味しかった。
また北海で獲れるサーモンは新鮮で美味しいし様々な料理に使われている。寿司はスウェーデンでも人気なようで、ストックホルムの街には沢山の寿司レストランや、寿司のテイクアウト店があったが、そこでもやはりサーモンは多用されていた。

スウェーデン独特のフードにReindeerレインデアー(トナカイ)肉の料理がある。注文する前に「独特の風味がある」と告げられたので、いわゆる獣臭がするのかと思っていた。
しかし食べてみるとそんなことはなく、とても美味しかった。ローストビーフやカルパッチョのように半分生のような調理法だったのにも関わらず、臭みはまったく感じずむしろ少しさっぱりした味だった。
初めて食べるトナカイのお肉だったがまた食べたいと思える一品だった。ストックホルムを訪れた際はぜひ試してみてほしい。
人口1000万人の国民が各産業分野で活躍するスウェーデン経済

スウェーデンの国民人口は全土合わせても950万人ほどだ。東京都よりも少ない人口しかいない。それにも関わらずスウェーデン経済は、製造業からアパレル、エンターテイメントまで幅広い業界・分野で世界に進出している。
自動車産業には日本でも見かける「VOLVO」があり、アパレル産業には世界第2位の売上高を誇る「H&M」がある。世界最大の家具ショップ「IKEA」もスウェーデンの企業である。
また昨今の世界のミュージックシーンを牽引するEDMやクラブミュージックにはAviciiなど多くのDJを輩出している。ちょっと前まで遡れば世界的に有名なABBAもスウェーデン出身だ。
どうしてこれだけ人口の少ない国が様々な分野で世界的に活躍できるのか。特筆すべきは、人口1人当たりのGDPと女性の労働参加率だ。
スウェーデン国民の一人当たりのGDPは約50,000ドル(2015)で世界第12位となっている。人口が極端に少ない小国や石油国などの特別な国を除けば世界でも第10位に入る。(日本は26位)
また女性の労働参加率は80%以上となっており(2010年データ)世界でも第3位の女性労働参加率だ。(日本は22位)

つまりスウェーデン経済の強さを端的に言ってしまえば、国民一人ひとりがより付加価値の高い労働をし、また多くの女性も労働に参加し価値を生み出していることに尽きる。
この2点がこの国の経済の源になっているのだ。これを支えるのは紛れもなく、「価値を生み出すことにコミットした短時間労働」と「男性の家事参加」だろう。
お客に聞くとスウェーデン男性は料理を作る人が多いとのこと。女性も多く働いているので、男性も家事に参加する家庭が多い。そして男性が家事に参加可能な職場環境があるということだ。
確かに経験上、スウェーデン人との仕事は確信を突くストレートなものが多い。無駄なことはせずまっすぐ本題に入り、大事なことに第一に取りかかる。何が本当に価値を生むかを分かっていてそれに集中する仕事ぶりだ。
こうした姿勢からまさに、短い労働時間でも付加価値の高い労働をするスウェーデン人の強さがわかる。
また僕のお客もそうだったが、バケーションで長期の休暇を取る人が多い。2週間くらいの休みを年に何回か取っており、南欧などの温かい地域に旅行へ行くらしい。
そのお客はポルトガルに別荘を持っていた。なんともうらやましい限りだ。しかしこうしたon-offのメリハリも、仕事をする上で重要であり、仕事のときは仕事に集中するというスタイルが付加価値の高い労働となっているのだろう。
「H&M HOME」に見るアパレル業界の熾烈な戦い

ストックホルムに本社を置く世界的アパレル企業のH&M。スペインのZARAに次ぐ世界第2位の売上高を誇っている。そのH&Mが今回、家具や雑貨を販売するH&M HOMEをオープンさせていた。
フェミニンでスタイリッシュな小物たちはH&Mファッションのコンセプトそのままによくデザインされていた。ZARAがZARA HOMEをやりだして数年経ち、ヨーロッパをはじめ日本でも人気がある。今回のH&M HOMEはこれに追随する形だ。
ストックホルムでも最近のオープンだったそうで、ここ数年のうちにヨーロッパやアメリカなどで展開していくのだろう。近い将来日本でも実店舗がオープンする可能性もある。
ファストファッションというカテゴリーを創り出し、デザインされた服を安く販売して、一気に成長した同社だが、家具・雑貨のカテゴリーでもデザインされたものをお値打ち価格で販売する戦略を仕掛けてきている。

こうなってくると気になるのが、売上高世界第3位につけるユニクロの動向だ。ユニクロはGUなど価格帯の異なるブランドは展開しているが、基本的にはファッション分野に売上が限定されている。
仮にZARA HOME やH&M HOMEが好調となれば、ファッション分野にしか売上の無いユニクロとの差がどんどん開いてしまう可能性がある。これは世界売上高で1位を目指している同社には非常に痛手である。
そうなればユニクロも近い将来、家具や小物類をあつかうUNIQULO HOME を展開する可能性があるのではないだろうか。非常に気になる動向なので、H&M HOMEの様子も含め今後も注視したいと思う。
働き方改革が求められている日本で、スウェーデン人の働き方、経済の実態は非常に参考になる。ストックホルムには観光ポイントも盛り沢山だったが、仕事の上でも良い刺激を感じ取れた出張だった。
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